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第2 自動車保険

1 自賠責保険
(9) 政府保障事業とは

(イ) 政府の保障事業
ひき逃げ事故で加害者がわからない場合や、加害車両が自賠責保険に加入していない場合には、被害者は加害者の加入する自賠責保険から損害の填補を受けられません。
このような場合に備えて、自賠責制度を補完し、被害者を救済するために、政府は自動車損害賠償保障事業を行っています(自動車損害賠償補償法71条以下)。
(ロ) 保障を受けられる場合
政府から保障を受けられるのは次の場合です。
(a) 加害車両の保有者が不明の場合(具体的には、ひき逃げ事故の場合が多いでしょう)
(b) 加害者が自賠責保険に加入していなかった場合
(ハ) 保障の内容
(a) 政府から保障を受けられる自動車事故の種類および保障限度額は自賠責保険の場合と同じです。すなわち、自動車事故の種類としては、人身事故のみで、物損事故は補償の対象になりません。保障限度額は、傷害の場合で120万円、後遺症の場際で等級に応じて75万円から4000万円、死亡の場合で3000万円です。
(b) 被害者が、健康保険給付、労災保険給付、介護保険給付など他の法令により損害を填補する給付を受けることができる場合には、その限度で、政府から保障を受けることはできません(自動車損害賠償補償法73条1項)。
(c) 加害者が自賠責保険に加入していなかった場合に、加害者や加害者と連帯して損害賠償義務を負う者(例えば加害者の使用者など)が被害者に損害賠償金を支払ったときは、被害者はその限度で政府から保障を受けることはできません(自動車損害賠償補償法73条2項)。物損についての損害賠償である場合は、政府からの保障が減額になることはありませんので、被害者が損害賠償を受ける場合には、加害者等との間で、その趣旨を明確にした書面を作成しておくべきです。
(d) 政府に対する保障金請求権は、被害者の加害者に対する損害賠償請求権とは別個の権利ではありますが、損害賠償請求権の存在を前提としています。したがって、そもそも加害者に損害賠償責任が発生しない場合には、政府に対する保障金請求権も発生しませんし、被害者に過失があれば、通常どおり過失相殺を行って保障金の額を算出します。
(e) 親族間で加害者、被害者となる事故については、原則として、保障の対象とされていません。
(f) 複数の加害車両からなる事故の場合で、加害車両のうち1台でも自賠責保険に加入していれば、保障の対象にはなりません。