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第2 自動車保険

3 各種保険の相互関係

(1) 自動車事故の被害者が取得する権利
自動車事故の被害者は、
(イ)加害者に対する民法ないし自動車損害賠償保障法に基づく損害賠償請求権
(ロ)自賠責保険の保険会社に対する直接請求権
(ハ)健康保険または労働者災害補償保険(労災保険)の保険給付請求権
を取得します。
被害者は、原則として、これらの請求権のうちどれを行使することも自由です。ただし、これらの請求権はいずれも、被害者に生じた損害の限度で填補するためのものであって、被害者に生じた損害以上の補償を行うものではありません。
そのため、これらの請求権間で調整が行われています。
(2) 健康保険と労災保険の関係
労災保険は、労働者の業務災害または通勤災害による損害を填補する社会保険であるのに対して、健康保険は、被保険者の業務災害および通勤災害以外の事由による損害を填補する社会保険です。したがって、自動車事故が業務中または通勤途上に生じた場合は、労災保険が適用され、それ以外の自動車事故の場合には健康保険が適用されます。
(3) 労災保険と加害者に対する損害賠償請求権との関係
労災保険の保険金が給付された場合、その給付額の限度で、国が受給者(被害者)の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得します。他方、加害者が保険給付に先立って被害者に損害賠償を行った場合、賠償された額の限度で保険給付はなされないことになります。
(4) 労災保険と自賠責保険との関係
自賠責保険のカバーする損害の範囲が慰謝料等に及び、労災保険より給付額が大きくなること、自賠責保険には仮渡金や内払いの制度があるため、早期に給付を受けられること等から、実務上、労災保険の保険給付請求よりも自賠責保険の直接請求が先になされることの方が多いようです。なお、労災保険給付の受給者が自賠責保険会社に対する直接請求権を有している場合には、労災保険の給付額の限度で、国が受給者の自賠責保険会社に対する直接請求権を代位取得します。
(5) 健康保険と加害者に対する損害賠償請求権との関係
健康保険を利用しない自由診療の治療費は健康保険を利用した場合よりも事実上2倍強となることが多いため、加害者の賠償能力が十分でない場合には、健康保険を利用した方がよいといえます。とりわけ、被害者側に大きな過失がある場合、過失相殺の結果、治療費を支払ってしまうと、実際に被害者が受け取ることのできる損害賠償の額は少なくなるため、健康保険を利用する方が有利といえます。
なお、健康保険の保険給付がなされたときは、給付をした保険者は、給付額の限度で、保険受給者(被害者)が加害者に対して有する損害賠償請求権を代位取得します。また、加害者が健康保険の保険給付よりも先に損害賠償を行ったときは、健康保険の保険者は、賠償額の限度で、保険給付義務を免れます。
(6) 健康保険と自賠責保険、任意自動車保険との関係
この場合も、被害者は、健康保険と自賠責保険や任意自動車保険のどちらにでも給付を請求できますが、同じ損害につき二重の給付を受けることはできません。